2003.10.27 東京都三鷹
――夢日記を拝読していて、頻出する特定の固有名詞がありますね。七飯(ななえ)とか。
夢の中に出てくる七飯(*4)の家は、おじいちゃんやおばあちゃんがいる。 子供の頃、たまの日曜日に遊びに行くんだけど、自宅から30キロくらい離れていてね、 それは大イベントだったなあ。
――先生のおじいさまは、何をされてたんですか。
もともとは学校の校長先生やってて、それでもう引退してたんだけどね。 果樹園を経営していて、りんごやなし、プラムなんかは食べ放題だった。 にわとりなんかもいたね。かなり昔は羊なんかもいたらしいけど。
――夢の中にタモリがよく出て来ますね。
うん。タモリは、'77年ころデビューしたんだけど、あの頃タモリはサブカルヒーローだった。 タモリにあこがれて早稲田のモダンジャズ研究会に入ったくらいだもんね(笑)。 今だと、あの当時のアンダーグランドカルチャーっぽい感じは『タモリ倶楽部』とかに ちょっと残ってるかな。
――そうですね。全冷中(*5)の時代の空気ですか?
筒井康隆、山下洋輔、坂田明とか、あのへんの人脈的流れがとてもおもしろかったんだよね。
――タモリ以外には何かよく登場してきた人物って記憶にありますか?
そういや、山城新伍とか出てきたね。別に、ファンだとか、そういうわけじゃないんだけど。
――夢って、ふだんあまり気にしていない人が出てきたりしますよね、。
そうそう。実はぼくの超自我が、山城新伍なのかも(笑)
――そういえば、『鶏男』(*6)は、夢日記を漫画化されたってことが今回の原稿を拝読していて 分かったんですけど、そうやって夢からマンガのアイデアを着想することはよくあるんですか?
ちょこちょこあるね。『×つのき駅』とか、『のんきな姉さん』もそうかな。 『のんきな姉さん』は、元になる夢を見てから、マンガにするまで5、6年熟成期間があったけど。
――森山塔のペンネームでお書きになっていた作品にも、夢ネタってけっこうあるんですか?
あんまりないね。
――やはり、90年代からですか?山本先生のマンガは性描写がとっても際どいのに、すごく オフビートな感じが夢っぽいなと思ってたんですけど。
そうだね、90年代からかな。フラグメンツの第1回もそうだね。あれも、もとは、夢だね。
――いちばん最近出版された作品『堀田』(*7)は、極めてシュールな感じの作品ですけど、 『堀田』にかんしては、「夢」を描こうって意識されたりしたんですか?
あれは、夢ってより、デタラメになる直前の、ギリギリな感じを描きたかったんだよね。
――なぜ『堀田』なんですか?ふしぎなタイトルです。
それはね、ハリー・ポッターを見ないで、ハリー・ポッターのパロディを描こうと思ったから。
――えっ!『堀田』ってのは、ハリー・ポッターのポッターをもじったんですか?
そう(笑)。堀田は名前、春男っていうんだもん。春男は、ハリーね(笑)。
――連載の間隔、たとえば、雑誌には週間、月刊、隔月、季刊、年刊といった感じで 連載のパターンがありますけど、作品を描かれるサイクルによって仕事をされるペースも変わりますよね。 生活パターンがかわると夢を見たり見ないとか、そういったことはありますか?
あんまり忙しくなると、夢を見ないとか、そういったことはないね。
――夢の中で、好きなシチュエーションってありますか。
寝る前にコーヒーをがぶがぶ飲んで、身体は眠りたいのに、眠れないときは キチガイみたいな、とんでもない夢を見るよ。長篇大河ドラマみたいな夢を見て、 それはシリーズになってるんだけど。
――シリーズ! 続編があるんですか?
そう。「これは、あれの2だ!」とかね。夢の中で分かって、喜んでいる感じがある。 ランボー2だ、エイリアン2だ、そんな感じで続き物があって、それは自分にとっては 最高におもしろいんだけど、ひとに伝えるのは難しいね。
――見た夢の内容を客観的に、しかもおもしろく伝えるのは難しいですよね。
うん。「おもしろい」っていう気持ちは強く残っている。 見た、ってことだけは残っているんだけど。でも、内容は覚えていないんだよね。 2、3っていうだけじゃなくて長篇シリーズ化している夢もあるけど、それは 自分にとっていちばんおもしろい夢だね。
――でも『ラジオの仏』の中には、すごく長い夢もありますね。
たまたま覚えてたんだと思う。
――お芝居の夢もありますが、やはり、演劇がお好きだからですか?
うん。まあ、夢の中で芝居を見てたり、役者の中に入って演じてたり。楽しいのがいいよね。
――ご覧になる夢の内容は、昔のことが多いですか?
最近のことも昔のこともあるけど、大学生、高校生のときの夢をよく見るね。 大人になっていて、大学に入りなおして、大学に入るのは2回目だから、 こんどこそ、4年で卒業できるとか(笑)。
――最近見られた夢で印象的なものはありますか?
さっき見ていた夢は、死んだ子供が水の中に浮いてて、一生懸命人工呼吸して生き返らせようとする夢。
――どれくらい前に見たんですか?
2時間くらい前。自宅のソファで寝てたの。だから、これがいちばんホットな夢日記だね。
――SFっぽい夢もけっこうありますね
うんB級SFっぽいのも、多いね。
――夢の中で、アナウンスがありますよね。あれは不思議な感じがしませんか?
アナウンスも多いね。解説や、ナレーションみたいな感じで、声があるんだけど、テレビを見ている感覚。 夢の中で、見ているものについて考えちゃう。それがナレーションになっているんじゃないかな。
――夢分析はされますか?
しないね。あまり詮索したくない。悪いことが出てきたりしそうだから。
――夢の中って解放されてますよね
夢のなかでは、ためらいがない。殴りたいと思ったら殴っちゃうからね。
――それが、夢のよさですよね。
そう。ただ、現実を考えると、たとえば人を殺したいと思うのと、実際に人を殺すまでに 本来は差があるんだけど、殺してしまう人間もいるんだよね。それは大変なこと。